相続人の中に未成年者がいる場合、相続手続きを進めるうえで注意が必要です。未成年者は、相続人としての権利はありますが、原則として自身の判断で法律行為(売買契約、遺産分割協議等)を行うことができません。未成年者が相続人の場合の手続きについて見ていきましょう。
1.未成年者が相続人の場合
2.未成年者が遺産分割協議をする場合
3.未成年者が相続放棄する場合
4.未成年者と代襲相続
5.両親が離婚している場合
未成年者とは満20歳に達しない者であり、民法上は制限行為能力者とされ、法律行為は原則として親権者または後見人が法定代理人として代わって行います。例えば、未成年者が携帯電話を契約する際には親の同意が必要となるなど、親権者が法定代理人となって手続きを進めることになっています。
そのため、遺産分割協議等についても、原則として未成年者には法定代理人が必要となります。
遺産分割協議も、親権者が法定代理人として協議に参加できるかといえば、必ずできるわけではありません。未成年者の親も相続人になっている場合、遺産分割協議では親権者と未成年者の利益が対立する関係になっている(「利益相反行為」)ので代理が認められていません。
それでは、未成年者が相続する場合どのような手続きをすればいいのでしょうか。
未成年者には親以外の代理人である「特別代理人」を選任させる必要があります。
「特別代理人」は、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所で申立てを行うことで選任されます。その際、申立てをするのは未成年者本人でなく、その親権者か利害関係者です。
以下、特別代理人が必要となる場合をいくつか取り上げています。
相続財産に借金しか残されていなかった場合、未成年者も相続放棄の手続きを行わなければ借金を相続していくことになります。
未成年者が相続放棄する場合、通常であれば代理人により行われますが、法定代理人と未成年者との間で利益が相反する場合、未成年者のための「特別代理人」を選任しなければなりません。
ただし、親子一緒に相続放棄する場合や、親が先に相続放棄をしていて後から子供の相続放棄をする場合、特別代理人の選任は必要なくなり、親が法定代理人として手続きを取ることができます。
代襲相続とは、相続人になるはずだった人(被相続人の子や兄弟姉妹)が、相続の開始以前に死亡等によって相続権を失っていた場合、その子(被相続人の孫や甥姪)が代わりに相続するという制度です。
代襲相続人が未成年者の場合、法定代理人や特別代理人による相続手続きを取る必要があります。子が未成年者の場合、法定代理人として子の片親が法定代理人となりますが、子が2人いる場合は、片親が2人の法定相続人になることは利益相反となるので、どちらか一方には「特別代理人」をつけなければなりません。
夫婦が離婚して他人になっても、親子の関係が切れることはありません。子供は両方の親にとって、第1順位の法定相続人になります。
子供が未成年者であれば、代理人と子供の利益が相反する場合は「特別代理人」の選任が必要になります。ただし、親権者でない片親が死亡した場合、親権者である親は子供の法定代理人となることができます。
作成日: 2018/09/20
クオリス代表村本 政彦
大手会計事務所で、約20年にわたり、主に事業承継、組織再編などのアドバイザリー業務や企業オーナーの相続税申告業務等に従事しておりました。
長年にわたり培った豊富な経験と幅広い知識を生かして、これからもお客様に的確なアドバイスをしていきたいと思っている一方、「お客様の現状を正しく分析し、今なにが必要かを考え、お客様を適切に導くこと」、言葉では単純なことのようにも思えますが、ときに難しく、長年携わっていても、新しいお客様をお迎えするたびに新たな気づきがあります。
これまでの経験と知識だけに甘えず、なにが必要かを本気で考え、さらにお客様へ貢献していけるよう精進してまいります。
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