相続で孫に遺産は遺せるの?

遺産を誰に遺そうかと考えたときに、お孫さんのことを思われる方も多いでしょう。

遺産相続で、民法で定められた相続人を法定相続人といいますが、法定相続人のなかにも順番があります。

 

目次.

1.法定相続人に孫は入っている?

2.孫に遺産は遺せるの?

3.まとめ

 

1.法定相続人に孫は入っている?

法定相続人には遺産をもらえる順番があり、以下のようになります。

常に法定相続人: 配偶者

第1順位:    子

第2順位:    被相続人の直系尊属(父母、祖父母など)

第3順位:    被相続人の兄弟姉妹

 

孫は、法定相続人の中に入っておらず、法律上では相続人にはなれません。

 

2.孫に遺産は遺せるの?

法律では孫は相続人にはなれませんが、孫に遺産を遺す方法はないのでしょうか?

以下の場合であれば、孫に財産を遺すことができます。

ただし、相続税が2割加算される場合があるので、注意が必要です。

(1)代襲相続で、孫が相続人になる

孫は、法律上、相続人になれません。しかし、被相続人の子がすでに亡くなっていた場合、代襲相続により孫は第1順位の法定相続人になります。

例えば・・・

夫、その配偶者と子供(男)、子供(女)がいる家族の場合、夫が亡くなった時の法定相続分は

配偶者:  1/2
子供(男):1/4
子供(女):1/4    となります。

ところが、子供(男)は夫が亡くなる何年か前に死亡していました。その場合、子供(男)の配偶者は義父(被相続人である夫)とは血縁関係がなく法定相続分はありません。よって、子供(男)と血縁関係のある、孫(子供(男)の子)に相続権が承継されます。つまり、代襲相続により、孫は第1順位の法定相続人となります。子供(男)の法定相続分は孫に承継され、孫の人数で等分されます。

孫が「代襲相続人」となり遺産を受取る場合は、相続税の2割加算はありません。

 

(2)養子縁組をして、法律上の親子になる

孫を自分の子として養子縁組をすることができます。

養子縁組には、実の親との関係を残したままにしておく「普通養子縁組」と、実の親との関係を完全に切り離してしまう「特別養子縁組」があります。

遺産相続対策として孫を養子縁組する場合、「普通養子縁組」の形をとることが一般的です。

祖父母の子(実子)が健在で孫を養子にする場合、養子は実子と同等の相続権があるので、祖父母が亡くなった時に孫は財産を受け取ることができます。この時、養子である孫が受取る財産については、相続税が2割加算される制度があるのでご注意ください。

 

(3)遺言書を書く(「遺贈」(遺言による贈与))

養子縁組をしなくても孫が相続財産を受け取れる方法としては、遺言書を書いて孫を指名する方法があります(「遺贈」)。

「遺贈」には、相続財産の全部または何分の1という割合で財産を譲る「包括遺贈」と、特定の財産を指定して譲る「特定遺贈」があります。「特定遺贈」では、指定された特定の財産以外の財産について、共同相続人間の遺産分割協議を行う必要はありません。

遺言書を作成する場合、法定相続人の遺留分を侵害すると、遺留分を侵害された相続人から孫に「遺留分減殺請求」されることもありえます。遺言書を作成する際に遺留分を配慮して作成する必要があります。

また、決められた方法によらなければ遺言書は無効となります。確実に孫に「遺贈」したい場合、公正証書遺言をおすすめします。

「遺贈」により孫が財産を取得した場合、原則として相続税の2割加算が行われます。ご注意ください。

 

(4)生前贈与で孫に渡す

財産を孫に渡すという意味では、生前贈与もあげられます。

祖父母が生きている間に孫に財産をあげてしまうものですが、毎年110万円までは贈与税がかかりません。また、相続人への生前贈与は「相続開始の日から遡って3年前までに受けた贈与は、相続財産に加算する」のですが、孫への生前贈与には、相続開始前3年以内の贈与加算が適用されません。贈与してからすぐに亡くなった場合でも相続税はかかりません。

 

(5)生命保険の受取人に孫を指定する

孫に財産を遺す手段として、生命保険の受取人に孫を指定することも選択肢の一つです。ただし、死亡保険金受取時に、孫が「遺贈」という形で受取る時は、相続税が2割加算されますので注意が必要です。死亡保険金は相続財産ではありませんが、みなし相続(「遺贈」)となるためです。

また、孫が死亡保険金の受取人になっていて「遺贈」により財産を取得すると、(4)では適用されなかった「相続開始前3年以内の贈与加算」が適用され、生前贈与の分も相続財産に加算され、相続税の対象になってしまいます。

さらに、「遺贈」により相続人以外の人が保険金等を受け取った場合、生命保険金等の非課税の適用はありません。つまり、相続人でない孫が「遺贈」により保険金を受け取ると、非課税枠の適用はないので全額課税されることになります。

 

3.まとめ

孫に財産を遺すには様々な方法があります。分からないことがあれば、専門家にご相談ください。専門家に相談することで、それぞれの家庭の状況に応じた対策方法が見つかることでしょう。

作成日: 2019/08/06

クオリス代表村本 政彦

大手会計事務所で、約20年にわたり、主に事業承継、組織再編などのアドバイザリー業務や企業オーナーの相続税申告業務等に従事しておりました。

長年にわたり培った豊富な経験と幅広い知識を生かして、これからもお客様に的確なアドバイスをしていきたいと思っている一方、「お客様の現状を正しく分析し、今なにが必要かを考え、お客様を適切に導くこと」、言葉では単純なことのようにも思えますが、ときに難しく、長年携わっていても、新しいお客様をお迎えするたびに新たな気づきがあります。

これまでの経験と知識だけに甘えず、なにが必要かを本気で考え、さらにお客様へ貢献していけるよう精進してまいります。

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